公共政策学修士、経済学部卒の村人Aです。
「日銀が長期金利の上限を0.5%にして、事実上の利上げを行い、金融緩和を縮小」というニュースが報道されました。
参考記事
日銀が緩和縮小、長期金利の上限0.5%に 事実上の利上げ(日本経済新聞)
この政策修正が私達の暮らしにどのような影響があるのか、経済予報として即興で解説していきたいと思います。なお、予報なのではずれる場合もあるのでご容赦ください。
住宅ローン金利、円安、物価高どうなる?
住宅ローン金利どうなる?
変動金利:影響なく、低金利が続く見込み。
変動金利は短期の金利に連動するため、今回の長期金利の変動許容幅拡大の影響は受けない。
固定金利:影響があり、これからの金利が上昇する可能性。
長期金利に連動しているため。
円安終了?
ドルとの関係では、多少円安になることはあっても、円高に振れる可能性の方が高い。
金利が高い方に資金が流れやすくなるというのが基本的な仕組み(利回りがいいため)。
日銀は基本的な金融緩和を維持するスタンスは変わらない一方で、米国は利上げを打ち止める条件が整いつつあり、金利格差の広がりが止まる公算が強いため。
物価上昇は止まる?
まだしばらく続く可能性が高い。2023年中には落ち着くと思われる。
円安・資源高により物価が上昇している。
企業が原材料費等の物価上昇の影響を受けた後、値上げにより個人に影響が出るには時間差があるため。ただ、これからは円高に振れやすい、また世界景気の減速による原油安で物価高は落ち着く可能性がある。
日銀における金融緩和の基本
日本銀行によって行われる金融政策は、
①政策金利(無担保コール翌日物)の引き下げ
②国債買い入れ(公開市場操作、売った金融機関が資金を手にする=市中に流通するお金が増える)
③預金準備率引き下げ(各金融機関が日銀に預けなければならない預金額を下げることで市中に流通するお金が増える)
が基本的な三本柱と言えます。
ざっくり言ってしまうと、日銀は金利を下げたり(質的)、世の中に出回るお金を増やすこと(量的)で景気を刺激します。
日銀の物価安定目標と金融緩和修正
日銀は賃上げを伴う安定的な物価上昇を実現することを目指していますが、それを実現するために以下のような施策を行っています。
①マイナス金利導入(日銀にある各金融機関一部預金に適用。市中に流通することを促す=景気刺激)
短期金利
②10年物国債を決まった価格で買い入れる(指定した金利)
長期金利
これらを通じて、日銀は長短金利を低く抑える施策(イールドカーブコントロール)を取っています。イールドカーブは期間と金利をグラフにしたものですが、貸出期間が長くなっていくにつれて、リスクが増えるので金利が上がっていくのが適正なカーブとなります。
今回の施策変更は、この長期金利の変動幅を拡大するものです。諸外国の物価高による利上げの影響で、今後の日本における長期金利は実質的に上昇することになります。
日銀の金融緩和修正による影響まとめ
①金利への影響
・変動金利は影響なし
金融機関が超短期で資金を貸し借りする市場金利(無担保コール翌日物)を元に各銀行等が決定する短期プライムレートと連動しているため。今回の長期金利上限引き上げの影響は受けない。
・固定金利は影響あり
10年物国債など長期金利と連動するため、金利は上昇する見込み。
②為替への影響
対ドルの関係で、多少円安になることはあっても、円高に振れる可能性の方が高いとみられる。
米国は金融政策においてインフレ退治を優先し、利上げをしてきた。そのインフレが落ち着きを見せてきているため、利上げの打ち止めが見えてきた。一方で、日銀は金融緩和を維持する方針であるため、今回の施策で為替が動いた後、徐々に円高に揺り戻しが来る可能性。米国が景気後退入りすれば、資金需要の落ち込みから米国金利が低下することも考えられる。
③物価への影響
物価上昇はまだしばらく続く可能性、来年中には落ち着くと見られる。
円安・資源高といったコスト上昇が物価高の原因であるため、円安や原油高が落ち着くことで物価上昇も徐々に鎮静化することが予想される。ただ、企業から個人への負担転嫁には時間差があることから、物価上昇が止まるにはもう少し時間がかかると見られる。
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