経済教室〜気軽にざっくり解説〜 第1回 「インフレって良いこと?悪いこと?」

keizai-kyoushitsu経済教室

公共政策学修士、経済学部卒の村人Aです。
この記事はあまり経済に詳しくない方、基本を復習したい方向けとなっています。
それでは、早速話題に入っていきます!

今回の話題「インフレって良いこと?悪いこと?」と結論

Q「インフレって良いこと?悪いこと?」

A「良いインフレと悪いインフレがあります。」

それでは、気軽にざっくり解説していきます。

はじめに:誰かの支出が誰かの収入になっている

まず、前提として押さえておきたいポイントをお話します。
それが、「誰かの支出が誰かの収入になっている」ということです。

このポイントを押さえた上で、以下の説明はさらっと見ていただいて、次に進んでも問題ありません。

一国での経済活動の主体は家計、企業、政府となっています。それぞれが何かしらの物・サービスに対して日々お金を払っていますが、ざっくり言ってしまうと以下のようになります。

・家計 個人消費
・企業 設備投資
・政府 政府支出

これを一国全体でまとめて、輸出入を含めると、国内総生産(支出側)となります。
国内総生産(支出側)=国内で生産された物・サービスに対する支出

次の式は覚えなくても大丈夫ですが、経済学では基本知識となるので覚えておいて損はないと思います。

国内総生産(支出側)=個人消費(C)+設備投資(I)+政府支出(G)+(輸出-輸入)

こうして行われた支出の合計が、誰かの収入になっているわけです。
誰かが支出を増やせば、それだけ他の誰かの収入が増えることになります。
そのため、不景気になると、政府が「財政政策」として政府支出(G)を増やしたり、日銀が「金融政策」として、金利を下げたりすることで投資(I)などを活性化させようとするわけです。「誰かの支出が誰かの収入になっている」ということを前提として、本題のインフレについてお話していきます。

1.良いインフレ

経済学的に良いインフレとされているのが、需要が増えることによる継続的な物価上昇です。
イメージとしては、オークションの参加人数が増えていくような形です。
つまりは、物・サービスの数が限られている中で、購入したい人が増える状況です。
そうすると、売上が伸びる又は売値が上昇するため、企業は収益が上がります。企業は収益が上がると賃金を上げる、賃金が上がると、物・サービスの需要がさらに増えて…というような需要を発端とした物価上昇です。

このような継続的な物価上昇を「ディマンド(需要)プルインフレ」といいます。

その場合の経済循環図を以下で示します。

ディマンドプルインフレの経済循環図

demand-pull-inflation

①物・サービスがより売れる/売値が上がる
②企業収益が上がる
③賃金が上がる・雇用を増やす・投資増やす(生産設備増強など)
④経済全体の支出意欲が増す
①に戻る


このサイクルが「経済の好循環」と言われるものです。

ディマンドプルインフレ時の企業収支

需要増加により売上が上がる一企業では、どのような収支になるのか簡単に見ていきましょう。

demand-pull-inflation-shuushi

売上が伸びた分を、企業は賃金アップや人手の確保、生産設備増強のためなどに使うことができます。それは結果として、経済全体ではお金の支出が増えることになりますから、誰かの収入増加をもたらすわけです。それがまた支出増加に繋がり…という状況が続きます。経済は繋がっていることがよくわかると思います。
そのような状況になるには、昨今話題の賃上げが経済学の理屈上は重要となる訳です。

2.悪いインフレ

経済学的に悪いインフレとされているのが、費用が上昇していくことによる継続的な物価上昇です。

このような継続的な物価上昇を「コストプッシュインフレ」といいます。

例えば、原材料費が値上がりすれば、企業の収益は下がりますし、人件費等その他費用を圧縮することになります。それだけで収まらなければ値上げをしなければなりません。現在、日本で起きている現象はこのタイプの物価上昇です。

では、経済全体としてはどのような現象が起きるのか見ていきましょう。

コストプッシュインフレの経済循環図

cost-push-inflation

このように経済全体で見れば、費用が増加することによって、玉突きで値上げが進んでいく状況になります。その値上げは費用上昇分を補うものですから、収益上昇には繋がりません。つまりは、誰かの収入が増えないどころか、生活費が上昇することになります。

コストプッシュインフレ時の企業収支

例として、原材料が上昇した一企業の収支を簡単に見ていきましょう。

cost-push-inflation

原材料費が上昇した企業は収益が下がるため、まずその他費用の削減を検討します。賃金を減らす(現実的にはシフト減など)などのコストカットで収まらない場合、値上げを実施することになります。
それが結果として、他企業の収益を圧迫し…

というように、費用削減や値上げが連鎖していくことになります。
こうした、賃金減等のコストカットや値上げは経済全体の支出力を落とすことに繋がりますから、それがまた買い控えなどに繋がり、誰かの収入を下げるといった悪循環になっていきます。

①原材料・人件費が上がる
②企業収益が下がる
③コストカット(賃金減らす・雇用減らす等)/値上げをする
④経済全体の消費余力が低下
⑤物・サービスが売れなくなる
③へ戻る


こうした経済の悪循環が始まると、物価上昇と不況が同時に起きる可能性が出てきます。
それが「スタグフレーション」と呼ばれる現象です。

3.基本のまとめ

ここまでが基本の解説となります。上記のように、良いインフレと悪いインフレがあり、今の日本は悪いインフレに傾いてきています。その背景には日米の金融政策の違いなどがあります。

経済を学ぶことは直接生活には役に立たないように思えますが、不動産や株式投資など、資産形成を適宜考える上では欠かせない知識です。不動産投資であれば金利の動向や価格の動向など、株式投資であれば経済政策による金利・為替への影響などなど、経済学はより一層重要で身近であるべき知識になっているのではないでしょうか。

かなり慣れてくると、日々目にするニュースによって、直近の経済がどう動くかが感覚的にわかるようになってきます。

これから、なるべく時事を絡めながら経済について解説していきたいと思います。
もっと、経済を勉強したいという方は下記書籍なども参考にしてみてください。
下記は発展なので、意欲のある方は参考にご覧ください。

発展1:スタグフレーションについて

スタグフレーションとは、不況と物価上昇が同時に進行していくことを指します。
つまりは「収入が変わらない又は減っていく」一方で、「生活費が上がっていく」ような状況です。
通常、物価と失業率は反比例の関係とされていますが(参考:フィリップス曲線)、物価は上昇するのに、失業率も上がっていくということが起こりえます。

ちなみにメモ…
過去にスタグフレーションに対して、採用した政策が米国と英国で違いがあったかと記憶しています。
記述のあった文献を探して改めて確認することができませんでしたが、スタグフレーションに対して、インフレ抑制策を取った国(金融政策)と景気刺激策を取った国(財政政策)では、明暗があったかと思います。
景気刺激策を取った国は長いこと低迷し、その後民営化など小さな政府路線を進めることでようやく脱却できたかと記憶しています。

発展2:日銀の物価上昇目標と現在の状況

日銀が思い描いているのが、継続的な賃上げにより、消費者の購買意欲が旺盛になって起きるディマンドプルインフレです。
ところが、解説してきたとおり、今の日本で起きているのは費用増加による物価上昇です。

ここのところ持続的に物価上昇率が目標とされる2%を超えてきています。しかし、日銀はそれも一時的と見ています。
また、賃上げを伴っていない物価上昇のため、黒田総裁は継続的な賃上げを伴う安定的な物価上昇が起きるまで現在の金融緩和姿勢を維持するとしています。

ただ、近年の金融緩和を振り返ると、物を買うなどの投資が増える実体経済への波及というより、株式市場等への資金流入が起き、そうした相場が膨れていく効果の方が大きいように感じます。そのため、日銀が狙う物価上昇が実現するかは不透明な状況と言えるでしょう。

おわりに:余談

余談ということで、私事になりますが、
経済・政策知識全般を学生時代(〜2011年)の充実していたレベルに回復するべく、2周目で勉強中です。10年以上ブランクのある錆びついた知識を磨き直し、またアップデートするべくこれからも経済の話題などについて記事を書いていこうと思います。


経済等について、一緒に勉強をしたいと思っている方は下記の書籍も参考にしてください。


最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

・黒田東彦「日本における物価変動と金融政策の役割」日本銀行
・その他確認でwebを少々参照

過去に読んだ書籍やおすすめ

この記事を書いた住人

公共政策学修士、経済学部卒、日商簿記検定2級、個人投資家(日本株2011年〜、米国株2022年〜)、リーマンショック分析経験者、健康情報収集家、東洋医学初学者、マクロビオティック初学者、モンテッソーリ教育初心者、シンガー、音楽家、タレント、イラストレーター、動画制作初心者、護身術初心者、茶道初心者、役立つ知識収集家、アイデア探求家、サラリーマンなど

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